日本経済新聞社宛公開質問状

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以下の2020年6月1日付日本経済新聞社長宛公開質問状に対して,2020年6月9日付にて日本経済新聞社編集局経済解説部長より回答をいただきました。

こちらよりPDFにてご覧ください。


2020年6月1日付日本経済新聞社宛公開質問状PDF版はこちら


経済理論学会 第2020-01号

2020年6月1日

株式会社日本経済新聞社 代表取締役社長

岡 田 直 敏 様

経済理論学会

幹 事 会

代表幹事 河 村 哲 二

 

 

公開質問状

 

 

時下 ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

本学会は,1959年に創設された,基礎理論から現代資本主義の諸問題までを広く扱う,経済学(ポリティカル・エコノミー)の総合学会(日本学術会議協力学術研究団体)です。とりわけマルクス経済学を,現代における経済学のもろもろの流れの基幹的な部分として位置づけ,自由な研究・討論の場を設けることを目的としております。

さて,このたび貴社が運営するウェブサイトである『NIKKEI STYLE』の2019年12月1日付記事https://style.nikkei.com/article/DGXMZO52661880X21C19A1EAC000/?page=2にて,インタビュアーである貴社の前田裕之編集委員による「旧ソ連の崩壊後,マルクス経済学は下火になりました。」との問いかけに対し,東京大学の渡辺努経済学部長(以下「渡辺学部長」と表記)が「ある時点で,東大の経済学部はマルクス経済学を専攻する専任教員は新規に採用しないという意思決定をしました。」旨を述べております。当該決定は,研究面での能力の如何にかかわらず特定の研究方法にもとづく研究者を組織的に排除する措置として学問の自由を侵害するものであり,また,戦前から戦時中にかけてマルクス経済学にもとづく研究者が組織的に排除されたという歴史の反省にたって制定された「東京大学憲章」の精神にも反するものと判断されます。

こうした認識にもとづき,当学会は,当該記事にかんして2019年12月19日付で東京大学総長宛に,上記の渡辺学部長による発言の内容のうち特に「意思決定」の部分が事実であるかどうか等を問うために,公開質問状を発出いたしました添付資料1参照)。この質問状にたいし,2019年12月27日付で東京大学名義にて,「事実関係を確認したところ,ご質問にある『意思決定』がなされたという事実はありませんでした」との回答を受領いたしました添付資料2参照)。この東京大学からの回答により,貴社ウェブサイトに掲載されている記事の内容が事実に反するものであるということが,東京大学当局によって公式に表明されたことになります。

この東京大学からの回答を踏まえまして,当学会では2020年2月26日付で渡辺学部長にたいし,事実に反する記事を掲載しつづけている貴社にたいしていかなる措置をとるのかを問う公開質問状を発出いたしました添付資料3参照)。この質問状にたいし,2020年3月30日付で渡辺学部長より,「インタビューにおいて私がその旨の発言をした事実もありません。それを踏まえ,当該記事を執筆した記者に対して,2019年12月に,インタビュー記事の内容が私の発言と異なる旨の申し入れを行いました。」との回答を受領いたしました添付資料4参照)。この渡辺学部長からの回答により,貴社ウェブサイトに掲載されている記事の内容が事実に反するものであるということに加えて,当該記事の執筆者である貴社の前田裕之編集委員宛に,記事の内容が事実と異なる旨の申し入れが渡辺学部長から2019年12月になされていたことも,明らかとなりました。

しかし,大変遺憾なことに,この事実に反する発言を含む当該記事は,上記の申し入れからおよそ半年を経た2020年6月1日時点においても,貴社が運営する『NIKKEI STYLE』に掲載されつづけております。このような現状は,当該発言の対象とされたマルクス経済学を研究の基幹部分に位置づけ,マルクス経済学にもとづく研究者が多数所属する学術団体である本学会として,看過できるものではございません。

貴社も加盟している日本新聞協会の『新聞倫理綱領』には,「新聞は歴史の記録者であり,記者の任務は真実の追究である。報道は正確かつ公正でなければならず,記者個人の立場や信条に左右されてはならない。」とあります。この『新聞倫理綱領』は,貴社の『行動規範』において「法令や社内規定,新聞倫理綱領,新聞販売綱領,新聞広告倫理綱領等を誠実に順守し,社会的良識を持って行動する。」とあるように,貴社にあっては「誠実に順守」するものとして位置づけられています。これらの綱領や規範を順守されているからこそ,貴社による報道はこれまで日本国内のみならず世界的にも名声を得てきているのではないかと拝察いたします。経済学ならびに経済分析を研究活動の中心とする当学会といたしまして,貴社による国内外の経済事象をめぐる優れた報道に深甚なる敬意を表します。

しかしながら,貴社の前田裕之編集委員による当該記事には,東京大学当局ならびに渡辺学部長の両者が事実に反すると公式に認める内容が含まれており,『新聞倫理綱領』にある「真実の追究」に反しているのみならず,「報道は正確かつ公正でなければならず」という部分にも反していると断じざるを得ません。加えて,当該記事の内容が不正確であることにより,貴社の『行動規範』にある,「取材・報道に際しては,中正公平に徹し,編集権の独立を堅持し,迅速で正確な情報を提供する。」にも当該記事が反しているといえます。

ここにおいて,以上の事実関係ならびに認識を踏まえまして,貴職宛に公開質問状の形式にて質問を提示し,ご回答を要請する次第です。

 

 

 

 

                            回答期限  2020年6月15日

                            回答の様式 文書による

                            回答送付先 経済理論学会 代表幹事 河村 哲二

                                            〒195-8585 東京都町田市金井町2160 和光大学経済経営学部

                                                                              日臺研究室内 経済理論学会本部事務局 気付

 

 

 

 

質問内容

 

1. 渡辺努東京大学経済学部長から貴社の前田裕之編集委員宛に,貴社ウェブサイト「NIKKEI STYLE」に2019年12月1日付で掲載されている前田裕之編集委員による記事の内容にかんする申し入れが2019年12月になされたのかどうかについて,お答えください。また,申し入れがあったとしたらその内容はいかなるものであったのか,具体的にお示しください。

 

2. 東京大学当局ならびに渡辺努東京大学経済学部長が,当該記事の内容について事実に反する旨を当学会からの公開質問状にたいする回答で公式に表明されていることについて,貴職はいかなる認識をお持ちでしょうか。明瞭にお示しください。

 

3. 当該記事の内容について,『新聞倫理綱領』ならびに貴社『行動規範』に合致し,全面的に真実かつ正確であると貴職はお考えでしょうか。端的にお示しください。

 

4. 当該記事の内容が真実性,正確性に欠けると認められる場合,いかなる措置を貴職はとられるでしょうか。具体的にお示しください。

 

以上