東京大学経済学部長宛公開質問状

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以下の2020年2月26日付東京大学経済学部長宛公開質問状に対して,2020年3月30日付にて東京大学経済学部長より回答をいただきました。

こちらよりPDFにてご覧ください。


2020年2月26日付東京大学経済学部長宛公開質問状PDF版はこちら


経済理論学会 第2019-03号

2020年2月26日

国立大学法人東京大学

経済学研究科長・経済学部長

渡  辺   努    様

経済理論学会

幹 事 会

代表幹事 河 村 哲 二

 

 

公開質問状

 

 

時下 ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

 

 本学会は,1959年に創設された,基礎理論から現代資本主義の諸問題までを広く扱う,経済学(ポリティカル・エコノミー)の総合学会(日本学術会議協力学術研究団体)です。とりわけマルクス経済学を,現代における経済学のもろもろの流れの基幹的な部分として位置づけ,自由な研究・討論の場を設けることを目的としております。

 さて,このたび日本経済新聞社が運営する「NIKKEI STYLE」の12月1日付記事(https://style.nikkei.com/article/DGXMZO52661880X21C19A1EAC000/?page=2)にて,インタビュアーである日本経済新聞社の前田裕之編集委員による「旧ソ連の崩壊後,マルクス経済学は下火になりました。」との問いかけに対し,貴職は「ある時点で,東大の経済学部はマルクス経済学を専攻する専任教員は新規に採用しないという意思決定をしました。」との発言をされたと明記されております。

 上記の貴職の発言で示されている「決定」は,研究面での能力の如何にかかわらず特定の研究方法にもとづく研究者を組織的に排除する措置であり,学問の自由を侵害するものであります。この措置は,学術の発展を担う研究者一般において問題とされるものでありますが,特に,当該決定において排除の対象とされたマルクス経済学を研究の基幹部分に位置づけ,マルクス経済学にもとづく研究者が多数所属する学術団体として,本学会は,研究面での能力の如何にかかわらず特定の研究方法にもとづく研究者を組織的に排除する当該決定に強く抗議いたします。

 さらに,マルクス経済学にもとづく研究者を組織的に大学から排除する決定は,治安維持法によってマルクス経済学にもとづく研究者が弾圧を受け,大学から排除され学問の自由が失われた戦前および戦時中の日本の歴史的過ちを繰り返すことにつながりかねない措置であるという懸念を本学会は有しております。

 以上の認識にたち,2019年12月14日に開催された本学会幹事会において対応を検討した結果,同年12月19日,貴学五神真総長宛に,公開質問状の形式にて以下の3点の質問を提示し回答を要請いたしました。

 

1. 貴学の渡辺努経済学部長による「ある時点で,東大の経済学部はマルクス経済学を専攻する専任教員は新規に採用しないという意思決定をしました。」という発言で言及された「意思決定」について,いつ,どのような手続きにて行われたのかを含め,具体的な内容をお示しください。

 

2. 貴学では,上記の「意思決定」によって,特定の研究方法にもとづく研究者を研究能力の如何にかかわらず組織的に排除する措置をとられておりますが,このように特定の研究方法にもとづく研究者を組織的に排除するに至った理由およびその学術的な背景をお示しください。

 

3. 貴学では,戦前から戦時中にかけてマルクス経済学にもとづく研究者が組織的に排除されたという歴史があります。「東京大学憲章」の前文には,「第二次世界大戦後の1949年,日本国憲法の下での教育改革に際し,それまでの歴史から学び,負の遺産を清算して平和的,民主的な国家社会の形成に寄与する新制大学として再出発を期し」とありますが,今回明らかとなった,マルクス経済学にもとづく研究者を組織的に排除する決定と上記の憲章との整合性について,貴学のご見解をお示しください。

 

 これにたいして,2019年12月27日付で東京大学名での文書による回答を拝受いたしました。その回答によると,「事実関係を確認したところ,ご質問にある『意思決定』がなされたという事実はありませんでした」とのことです。貴学によるこの回答により,当該記事における「ある時点で,東大の経済学部はマルクス経済学を専攻する専任教員は新規に採用しないという意思決定をしました。」という貴職による発言の内容が事実に反するものであるということが,公式に確認されました。

先の貴学宛て公開質問状の質問項目3にありますように,「東京大学憲章」の前文には,「第二次世界大戦後の1949年,日本国憲法の下での教育改革に際し,それまでの歴史から学び,負の遺産を清算して平和的,民主的な国家社会の形成に寄与する新制大学として再出発を期し」とあります。本学会としても,貴学の憲章に体現されております学問の自由の尊重を高く評価しております。また,貴学部・研究科におきましても,「【経済理論】概要」の「経済理論コース」の説明として「経済学研究科の輝かしき伝統は,競合するさまざまなアプローチに対して開かれた場であるということです。経済理論コースでは,同時に,マルクス経済学にもとづくコースも多く用意しています。」と謳われていました(http://www.e.u-tokyo.ac.jp/fservice/program/course01.html2020年1月10日閲覧)。上記の貴職の発言として公開されている記事では,貴職の上記の「意思決定」についての発言に続いて,マルクス経済学系統の科目について「現在は非常勤の方に教えていただいています」という発言がなされていますが,本学会は,学問の自由を尊重する「東京大学憲章」とならび,貴学経済学研究科の「輝かしき伝統」に高い敬意を表するものであります。貴学におかれまして,この「輝かしき伝統」のいっそうの発展に大いに期待しております。

 しかしながら,大変遺憾なことに,「意思決定」に関する事実に反する発言内容を含む記事は,2020年2月25日現在でも「NIKKEI STYLE」に掲載されつづけております。本学会といたしましては,貴学による回答が発出されたことを契機に,発言の当事者である貴職が当該記事に対して何らかの措置を取られるものと期待をしておりました。しかしながら,回答の発出からおよそ2ヶ月を経た現時点においても,貴職による事実に反する発言内容を記載する記事が,訂正もされずに公開された状態で放置されております。このような現状は,当該発言の対象とされたマルクス経済学を研究の基幹部分に位置づけ,マルクス経済学にもとづく研究者が多数所属する学術団体である本学会として,看過できるものではございません。

 以上の認識を踏まえまして,今般,貴職宛に公開質問状の形式にて質問を提示し回答を要請する次第です。なお本件について,貴学総長宛にも別紙添付のとおり本学会からの公開質問状をお送りして回答を要請しておりますことを申し添えます。

 

 

回答期限  2020年3月15日

回答の様式 文書による

回答送付先 経済理論学会 代表幹事 河村 哲二

〒195-8585 東京都町田市金井町2160 和光大学経済経営学部

日臺研究室内 経済理論学会本部事務局 気付

 

質問内容

 

1. 「ご質問にある『意思決定』がなされたという事実」がなかったことが貴学によって正式に確認された以上,貴職には,直ちに件の発言を撤回されることを強く要望いたします。以上の要望につき,貴職のご見解をお示し下さい。

 

2. 「ご質問にある『意思決定』がなされたという事実」がなかったことが貴学によって正式に確認された以上,マルクス経済学にかかわる事実に反する貴職の発言がインターネット上で日本経済新聞社によって公表されている事態が放置されたままでは,マルクス経済学にもとづく研究者が多数所属する学術団体である本学会の活動に著しく支障を来します。貴職には,直ちに日本経済新聞社にたいして訂正記事の掲載を求める等の措置を取られることを強く要望いたします。以上の要望につき,どのような措置を取られるのかを具体的にお示し下さい。

 

以上